運動の生理学


適切な運動は、糖尿病の予防や、治療にとって非常に効果的であることは、 すでにご存知のことと思いますが、今回は、そのメカニズムについて簡単に解説します。 「運動の生理学」などというとなにやら難しそうな感じがしますが、 なるべく細かいことは省略してわかりやすくをモットーに解説しますので、気楽によんでください。 まず、運動は基本的には、筋肉を動かすことです。 筋肉を動かすとは、筋肉を収縮させるということです。 筋肉を収縮させるには、エネルギーが必要です。 このエネルギーのもとは、大ざっぱにいうと糖と脂質です。 このどちらを使うかは、運動の強さと、持続時間によって決まってくるといわれています。 運動の初期では、筋肉のグリコーゲン(分解するとブドウ糖になる)が分解されて、 エネルギーとなります。 次に血液中のブドウ糖が、使われます。 運動開始後、5から10分後は、運動の強さにより使われるエネルギー源が異なってきます。 運動の強さが弱い場合は、脂質の分解によりエネルギーを得ます。 強い場合は、グリコーゲンの分解によってエネルギーを得ます。 また、運動の強さが中くらいの場合は、グリコーゲンの分解や、 肝臓で新たに合成されたブドウ糖と、脂肪の分解によりエネルギーを得るといわれています。 運動と一口にいっても、その強さや継続時間により、体の中で起こっていることは、 かなり複雑であることがおわかりいただけたかと思います。 さて、糖尿病の場合運動を行うとどのようなことが体の中で起こるのでしょうか。 インスリンが、極端に不足している場合は、筋肉が、血液中のブドウ糖を十分に取り込めないため、 ブドウ糖の利用は、抑制されます。 一方、運動により消費されるエネルギーをまかなうため、 肝臓でのブドウ糖の合成が増え結果としてかえって血糖値が増加してしまいます。 一方、インスリンがまあまあ以上の状態であれば、運動により、 血液中のブドウ糖が利用され血糖値は低下します。 また、運動により、インスリンのききぐあいが良くなることが知られています。 糖尿病であっても、運動がよい場合もあるし、かえって良くない場合もあるのです。 また、合併症のあるなしによっても事情は異なってくるでしょう。 従って、自己流の判断による運動は、危険な場合があるので必ず、 医師の指導のもとで行う必要があります。


目次(2)に戻る 前の号を読む 次の号を読む ホーム・ページに戻る