運動による健康障害


適切な運動療法が、糖尿病にとって非常に有効な治療法の一つであることは、 誰もが認めるところです。 糖尿病に限らず、運動が、健康増進につながることは、古くから知られていました。 しかし、最近「運動による健康障害」ということも問題になってきています。 無理な運動、過度な運動は、けがや病気のもとでもあります。 この「運動による健康障害」を運動器(腕、脚、関節など)障害と、 全身障害に分けて考えてみましょう。 運動器障害は、大きく分けると、急激な外力が加わったために障害されるタイプと 慢性的な過重負荷によって起こるものとがあります。 前者には、靱帯断裂、脱臼、骨折などがあります。 また後者には、腱鞘炎、骨膜炎、筋炎、関節症などがあります。 これらは、スポーツ外傷などともよばれており、 スポーツの選手など日頃から運動をしている人にもみられます。 これは、トレーニングの方法が、間違っていたり、 本人の不注意などで起こることもありますが、 スポーツと外傷は、不可避な関係にあります。 次に全身障害ですが、この最たるものに運動中の突然死というのがあります。 この原因は、若い人では、心臓の動脈(冠状動脈)の生まれつきの異常や、 心筋症(心臓の筋肉の異常)であることが多いといわれています。 中高年では、虚血性心疾患(狭心症や、心筋梗塞)、 脳出血、日射病による脱水などが原因ではないかといわれています。 また、スポーツ教室などで水泳後に突然、「健忘症」が現れることも注目されています。 腎臓の悪い人が、無理に運動すると腎臓がさらに悪くなり、 腎不全になったりすることもあります。 このように並べてみると運動は、害ばかりあるように思われるかもしれませんが、 適切な運動は、最良の薬でもあります。 要するに、使い方一つで薬にも毒にもなるのです。 具体的な方法については、また回を改めて書く予定です。


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