ステロイド糖尿病


「ステロイド」という言葉は聞いたことがある人も多いと思います。いろいろな病気に使 われる薬である、と思われた方もいるでしょう。

ステロイドとは、化学的に「ステロイド核」と呼ばれる構造を持つ化合物の総称ですが、 一般的には副腎皮質から分泌される「グルココルチコイド」ホルモンのことを指すことが 多いようです。

グルココルチコイドが体内に過剰に存在すると糖尿病状態が起こりうることが知られてい ます。このグルココルチコイドの過剰状態は、副腎皮質の腫瘍などによっても引き起こさ れますし、治療薬としてのステロイドによっても起こり得ます。

このようにグルココルチコイドの過剰状態が原因で引き起こされる糖尿病を「ステロイド 糖尿病」などと呼ぶことがあります。

「ステロイド糖尿病」では、一般の糖尿病と比べて血管合併症(網膜症、腎症)の起こる頻度 は低いと考えられています。これは、「ステロイド糖尿病」が、一般の糖尿病に比べて高血 糖にさらされる期間が短いためであると思われます。

「ステロイド糖尿病」は薬が原因であれぱ、これを中止することにより、また腫瘍が原因 であればこれを取り除くことにより軽快、治癒します。

しかし、もともと糖尿病素因のある人が、ステロイド過剰状態で糖尿病が発症した場合は 糖尿病状態が永続します。

ステロイド糖尿病ではインスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)状態になっています。 この現象は大昔より知られていましたが、詳しいメカニズムについてはあまりよくわかっ ていませんでした。

インスリンが血糖値を下げる一つのメカニズムとして、細胞内に存在する「糖輸送担体」 を細胞表面に移動させ、これが、糖を細胞内に取り込み血糖値が下がる、ということが比 較的最近わかってきました。グルココルチコイドはこの「糖輸送担体」が細胞表面に移動 するのを妨害することが実験的に証明されました。その他にもインスリンを効きにくくし ている原因が次々に証明されつつあります。


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