筋肉と脂肪


人体の脂肪組織量の測定は昔からいろいろな測定法が工夫されてきました。 脂肪組織がインスリン抵抗性に関与するいろいろな物質を積極的に分泌していることも解明されています。

また最近では、脂肪組織以外の脂肪量を測定する方法も開発されつつあります。たとえば筋肉内の脂肪量です。動物実験などでは直接筋肉を取り出して測定すればよいのでしょうが、人間ではそのようなことは不可能です。

MRIという検査は聞いたことがあると思います。CTと並んでMRIもかなり普及している検査です。これを応用して筋肉を取り出すことなく、筋肉内の脂肪量を推定することができるようになりました。原理については省略しますが、これを使った研究ではかなり興味深い結果が出ています。

たとえば骨格筋内の中性脂肪量とインスリン抵抗性は相関がみられるという報告があります。インスリン抵抗性の強い人では、やはり筋肉内にも脂肪が多いのかと改めて感心(?)させらます。一方筋肉をよく使うスポーツ選手ではインスリン感受性が良好なのですが、筋肉内の脂肪量は増えているとの報告があります。

もっとも体全体からみると筋肉内の脂肪量は、脂肪組織のそれに比べると微々たるものであるので、筋肉内の脂肪含量だけでいろいろなことを推し量るのは少し無理があるのかもしれません。しかし、今後この方面の研究が進むと、臨床に直結するような新しい知見が得られる可能性も高いと思われます。


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