糖尿病と神経の障害


糖尿病の合併症の一つに神経障害というのがあります。 神経というのは、ご存知の通り脳の命令を筋肉や、内蔵などに伝えたり、 痛みを脳に伝えたりする電話線のようなものであり、体中に張り巡らされています。 この神経が障害されることにより実にいろいろな症状が現れます。

比較的多くみられるものに手足のしびれというのがあります。 「手足がぴりぴりする」、「足の裏に紙が貼り付いたような感じがする」、 「足がじんじんする」などと訴えることが多いようです。 このような症状は普通は左右対称に起こり、指先の方ほど症状が強いという特徴があります。 これは、感覚を伝える神経が障害されたときに起こるものです。

また、糖尿病にかかっている期間が長いと自律神経という内蔵の働きと 関係のある神経が障害を受けることもあります。 自律神経が障害を受けると、膀胱や、心臓や、胃腸などの動きがおかしくなってきます。 正常な状態では、尿をすると膀胱の中は空っぽになります。 しかし自律神経の障害があると、排尿後にも膀胱の中に尿が たまっているということが起こってきます。 いつも膀胱に尿がたまっているとバイ菌などの感染を起こしやすくなってしまいます。 運動をした後は、誰でも脈が速くなります。 体がたくさんの酸素を必要とするので、 心臓が速く動いて血液をたくさん送り出そうとするためです。 また、安静にしているときでも、心電図をとってみると、呼吸の影響で脈の間隔は、 少しずつ違っているのが普通です。 これらは、心臓につながっている神経で調節されているのです。 この神経の働きが障害されるとついには、 いつでも脈は全く同じ間隔でしか打たなくなってしまい、 突然死と言う最悪の事態も起こりうる状態になってしまいます。 胃の動きも神経で調節されていますが、この調節が障害されると、 胃が動かなくなってしまい、いつまでも食べた物が胃の中に残っているという状態が起こります。 さらに食べ続けると胃が満杯になってしまい、吐いてしまいます。 吐いた物は、何日も前の物であり大変なにおいがします。 時には、ひどい下痢が起こることもあります。 自律神経が障害されると、立ち眩みなどの血圧の調節障害が現れることもあります。 そのほかにも、顔面神経や、眼の動きを調節する神経など脳から直接出ている神経(脳神経) ががおかされることもあります。 しびれなどと違い普通左右どちらか片方だけに症状が現れます。 糖尿病以外の病気でもこのような症状が出ることがあるので、 脳外科などの専門医でみてもらわなくてはなりません。 こういった神経の障害される仕組みについては、 ある程度わかってきておりその治療のための薬もいくつかありますが、 完全な物ではありません。

何よりも普段の血糖コントロールが大事であることはいうまでもありません。


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