糖尿病と民間療法


糖尿病治療の3本柱といえば、食事・運動・薬物療法のことで、 食事療法が、最も基本となることは、すでにご存知のことと思います。 しかし、これ以外に、時代や、地域によりいろいろな民間療法が、 まことしやかに行われております。『かぼちゃが、糖尿病によい』とか、 『○○茶を飲んで血糖が下がった』などなどです。

また、新聞の折り込み広告や、週刊誌には、よく健康食品の宣伝が載っています。 ○○エキス、○○レラ、ビタミン○○など実に多くの商品が売られています。 こういう広告には、よく使用者の体験談が一緒に載っています。 『私は、これを飲んで糖尿病が良くなりました』、 『私は、これを使って合併症が治りました』などと、 いう記事がその人の写真入りで出ています。 その商品を使うと、すぐにでも糖尿病が治ってしまいそうな気になってしまいます。 しかし、その商品を飲んだり、使っても病気に対して効果があるとは、 どこにも書いてありません。 その商品を使った人が勝手に効果があると言っているだけです。 もし本当に効果のあるものならば、学会で取り上げられ、 多くの研究者により効果が確かめられ、正式な治療法として 広く普及するでしょう。

しかし民間療法と言われるもののほとんど全ては、 糖尿病に対し全く効果がないか、あるいはかえって害になるものなのです。 私が診た患者さんの中で、いつもベッドの下に立派な瓶に入った お酒のようなものを大事に保管している人がおりました。 聞いてみると、糖尿病によく効くということで、数年前から飲んでいるとのことです。 これも例の健康食品の中の一つでした。 しかも値段がべらぼうに高いので驚きました。 そんなものは、全く効果がないしもしかすると、 血糖があがるかもしれないのでやめるよう説得しましたが、 あまり納得していなかったようでした。 その後その患者さんに会っていないので、どうしているかは、不明です。 たぶん今も飲み続けているのでしょう。

長年、正しいと信じて行っていたことが、ある日突然無意味である と言われてもにわかには、信じられないのでしょう。 長いこと地球は、平板であると信じていた人たちに、ある日突然「地球は丸い」 と言っても本気にしてもらえないのと同じであると思われます。 やはり、糖尿病という病気と正しくつき合っていくには、 最初の教育が大切だと思われます。


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