糖尿病と腎臓の障害


 糖尿病を放置しておくと、いろいろな合併症 (余病)が起こってきますが、その中の一つに腎臓障害(腎症)があります。 腎臓は、ご存知のように血液中の不要な物質を尿に排泄(はいせつ) するための重要な臓器です。

腎臓が全く働かなくなってしまうと、不要な物質が血液中にどんどんたまってしまい、 尿毒症という状態になってしまいます。 こうなると生命が危険になるため、血液透析という治療が必要になってきます。 機械で血液中の不要な物質や有害物質を取り除かなくてはいけなくなるのです。 糖尿病による腎臓障害で透析を受ける人は、世界的にもどんどん増えています。

米国では、1984年の新規透析導入患者の24.5%が糖尿病で、 原因別の第一位でした。日本でも1987年の新規透析導入患者の22.1%が糖尿病で、 10年間で2倍に増加しています。

 では、糖尿病による腎障害はどのように進行していくのでしょうか。 まず最初は、尿にごく少量の蛋白質(微量アルブミン)がでるようになります。 これは、普通の尿の試験紙(尿に浸して、糖や蛋白が出ていないか調べるもの) では、検出されないくらいの少量です。 さらに進むと蛋白の出方が多くなり、 普通の試験紙で調べてもとときどき陽性に出るようになります。 次にいつ調べても陽性に出るようになります(持続的蛋白尿)。 さらに進むと、腎臓の働きそのものが悪くなっていき血液中に、 老廃物(不要なもの、有毒なもの)がたまり始めてきます。 しかしそれでもほとんど症状は出ません。 尿への蛋白の出方が激しいと、血液中の蛋白質が減ってしまい、 全身がむくんでくることもあります。 さらに血液中に老廃物がたまってくると、 生命が危険になるために透析が必要になってきます。 したがって、何か症状が現れたときは、腎臓は相当に障害されていると思わなくてはなりません。 このような腎臓障害を起こさないようにしたり、 すでに起こっている腎障害を進まないようにするには、 やはり血糖をきちんとコントロールしておく必要があります。 また、軽い腎障害を進まないようにするには、 血糖の他に血圧のコントロールも重要であると言われています。 腎臓の障害の程度により、食事の内容も変わってきます。 運動や日常生活が制限されることもありますので何事も自己判断によらず、 主治医の先生の指示に従うことが大切です。


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