食事療法の難しさ


 糖尿病治療にとって最も基本となるのが、 食事療法であることは言うまでもありません。 しかしながら、食事療法をきちんと行っている患者さんは、 数えるほどしかいません。

効果のある食事療法をきちんと行うためには、 二つの用件を満たす必要があります。 一つは、正しい食事療法についての知識を持つということです。 もう一つは、それをきちんと実行することです。

「食事療法をしているのに、少しも体重が減らないし、 血糖もよくならない。」と、訴える患者さんの多くは、 正しい食事療法の知識がないために、自分では、 きちんと食事療法を行っているつもりでいて 少しも食事療法になっていないのです。 栄養士さんなどから何回も食事指導を受けていて、 知識も十分にあると思われる人から、「 甘いものは、食べていないのに、血糖が下がりません。」 などと言われ、がっかりすることがあります。 これは、われわれ医療を行う側の責任でもあり、 患者指導の難しさを痛感させられます。

また、正しい知識があるのに何かと 理由を付けて食事を守らない患者さんもいます。 「昨日は、○○さんの結婚式でした。」 「昨日は親戚の子供が遊びに来て、お菓子を食べ過ぎてしまいました。」 「法事かあって食べ過ぎました。」なとなど・・・。 また、中には、食事療法を全く信じておらず、 自己流の治療法に固執する人もいます。 「こんな少ない食事量では、体力がなくなってしまい、死んでしまう。」 「やせてこないから、まだまだ大丈夫」 「糖尿病の薬をください」 「○○茶を飲んで、血糖が下がっているから、食事療法は必要ない。」 こういう人の中には、食事療法の大切さを説明すると怒りだしてしまう人もいます。 また、あまり食事のことを言うと来院しなくなってしまう人もいます。

ともかく、正しい食事療法を実践するには、医療側も、 患者さんも気長に地道に努力するしかないようです。


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