糖尿病と自律神経異常の検査


糖尿病の合併症として神経障害がありますが、なかでも自律神経の障害は診断が難しく、また治療も画期的なものがないのが実情でした。

従来、糖尿病に関連した自律神経障害として、心拍固定、起立性低血圧などが知られていました。

糖尿病性自立神経障害の指標の一つとして心電図上での脈の間隔の変動が少なくなる、というものがありました。脈(心臓の鼓動)は呼吸により、その間隔が微妙に伸び縮みしているのが正常です。これは、自律神経により調整されています。自律神経が障害されると、この伸び縮みが少なくなり、ついにはいつも同じ間隔で脈を打つようになります。これを心拍固定と呼びます。これは、心電図の波の間隔を調べて、統計処理をすると数値で診断することができます。

起立性低血圧とは、立ち上がった時などに一時的に血圧が下がり、めまい、脱力感、時には吐き気を催したりする症状をいいます。これは、糖尿病性自律神経障害に特有というわけではなく、健康人でも時に認められます。これは、起立時に血液が一時的に足の方に移動し、脳へ行く血液が減少するためと考えられています。通常は足の欠陥が収縮し必要以上に足の方に血液が行かないようになっています。自律神経障害ではこの調整がうまくいかず、起立性低血圧が起こります。

また、「QT延長症候群」という聞き慣れない病態もあります。これは、自律神経の障害に加えて心臓そのものにも何か障害があるといわれています。興奮やストレスで失神し、適切な治療が行われないと、死に至るという恐ろしいものです。発作がないときの心電図検査では以上は認められず、発作時に心電図に特徴的な異常がでます。

今までは、このような自律神経系の異常は主に、心電図の詳細な検討や、いろいろな状態での血圧の測定などで主に診断されていました。

最近では、心臓の自律神経機能を画像で診断する試みがなされています。心臓の交感神経(自律神経のひとつ)に取り込まれやすいアイソトープを用いて、これを撮影すると交感神経の分布の様子が画像としてとらえることがでるようになってきました。

検査法が進歩して的確な診断ができるようになっても、自律神経障害を根本的に治療することは非常に困難です。普段の良好な血糖コントロールにより自律神経障害を起こさないようにすることが重要です。


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