超速効型インスリン


インスリン製剤は糖尿病治療に重要な役割を果たしてきたことはすでにご存知のことと思 います。

筆者が学校を卒業した手の頃、インスリンは、ウシ・ブタなどの動物由来のものが主体でした。 そうこうしているうちに、遺伝子組み換え技術の進歩により動物製剤は姿を消して ヒトインスリン製剤がメインとなりました。

人間と同じインスリンが簡単に手にはいるのですから、これ以上のことは望めないと思っていたら、 インスリンをさらに改良してもっと使いやすいものにする研究が進んでいました。

その一つが「超速効型インスリン」です。 現在のヒトインスリン製剤では、速効型でも吸収されるまでに少し時間がかかります。 食事の30分前に注射しなさい、と言われるのはこのためです。 いつも決まった時間に食事を取るのが理想ですが、現実にはなかなかうまくいかないこともあります。

 食事を取ろうと思い、インスリン注射をしたが急用ができて食事が取れずに低血糖にな った、などという話をよく聞きます。

 現在のヒトインスリン製剤は、複数のインスリン分子が集合する性質があり、この集合 からはずれて、吸収されるのに時間がかかると言われています。インスリン分子の一部を 改変することによりこの問題を解決することができます。

 さて、このような超速効型インスリン製剤は外国ではすでに使われており、いろいろな 臨床データも多数報告されています。食後の高血糖を押さえるのに従来の製剤よりも有効 であるとか、糖尿病の妊婦さんの治療に有効であるとか、患者さんのQOLの向上に役立つ などの報告が見られます。

 日本でも近々使用可能となります。インスリン治療を受けている患者さんの中には、こ の製剤を待ち望んでいる方も少なくありません。

 しかし、超速効型インスリン製剤は魔法の薬ではなく、適切な食事療法・運動療法無し には真価が発揮されません。


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