糖尿病と起立性低血圧


座った状態から急に立ち上がったときフラッとした経験は、だれでもあると思います。

これは、立ち上がった時に一時的に血圧が下がったために起こります。 これを起立性低血圧と呼びます。

この状態が頻繁に起こったり、程度が強い場合は日常生活に支障を来すことになります。

立ち上がると、重力の影響で血液が下肢の方に下がります。 しかし、通常の場合、自律神経の調節で下肢の血管が細くなり、 極端に下肢に血液が集まらないようになっています。

この調整がうまくいかないと脳の方に血液が十分に供給されずめまいが起こります。

糖尿病で、自立神経が障害されると重症の起立性低血圧が起こることがあります。

筆者は、以前、寝て血圧を測ると高血圧で、 立ち上がると血圧が極端に下がり意識がもうろうとなるような患者さんを診たことがあります。

さて、起立性低血圧の薬はいくつかありますが、いずれも血圧を上昇させる作用があります。 ですから、高血圧で、起立性低血圧を有している患者さんの治療は一筋縄ではいかなくなります。 弾性ストッキングというものをはいてもらって、起立時の低血圧を防ぐ方法もありますが、筆者は経験がありません。 最近、漢方薬の中に血圧を上げずに起立性低血圧を緩和するものがあるという、 症例報告を見ましたが、多くのの患者さんに有効かどうかは不明です。

糖尿病が原因で起立性低血圧が起こるには、血糖コントロール不良の状態がかなり長期間続く必要があります。 このようなことが起こらないように血糖コントロールを良好に保っておくことが、一番の予防法です。


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