糖尿病と経済学


病気になるとお金がかかります。 患者さんはもちろん、社会全体で、お金がかかってしまいす 。医療費がどんどん膨張して国家的な大問題になっていることは、すでにご存知のことと思います。

そこで、最近は、いかにして、お金をかけずに効果的な医療が出来るかということも 研究されてきています。 しかし、日本ではまだまだこの方面の研究は進んでいません。 一つには、医学的な研究に経済学の原理を持ち込むのは、 間違いであるという考えが根強いからです。 もちろん、経済学的な考えを重視しすぎるのは問題です。 しかし、全く無視することもできません。

そこで、筆者は昨年度、当院外来に通院している糖尿病患者さんについて QOLと医療費について調査を行いました。 いろいろ興味深い結果が出ましたのでその一部を紹介ます。

QOLは、以前にも紹介した飯田らのQUIKを用い、 数値化しました。身体機能尺度や、生活目標尺度の悪化は、薬品費を高くします。 つまり、体の具合が悪くなる、生活の張りが失われるといった状態は、 薬を多く必要とするという状態を作るということでしょうか。

また、QOLの総合得点の悪化や、生活目標尺度の悪化は、 検査費を下げるという奇妙な結果が出ました。 QOLが、極端に悪い場合、検査をしてもどうしようもないということなのでしょうか。 意欲もなく、検査も望まないということなのでしょうか。 この辺の解釈はよくわかりません。 確かに、病態が進んでしまい症状が固定してしまうと、 頻繁に検査をしても意味がないこともあります。 また、患者さんも検査を望まないということもあるでしょう。

糖尿病の治療法別に見ると、インスリンを使っている人は、 そうでない人に比べ総医療費が高いという結果が出ました。 これは、納得できることのように思えますが、 細かく見ると医療制度上の問題も含んでいるようです。 しかし、ここではこの点についてはこれ以上深入りしません。

また、心疾患を合併すると医療費が高くなるという結果も出ています。 これは当然かも知れません。 網膜症や、腎症の合併と医療費については、症例が少ないためはっきりとした結果は出ませんでした。しかし、こういう合併症が出れば、医療費が当然高くなることは、想像に難くありません。 食事療法のみで、血糖コントロールを良好に保ち、 合併症を起こさないということが患者さん本人にとっても、 経済学的な観点から見てももっとも望ましいということは言うまでもありません。


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