糖尿病とビスファチン


本連載でも、いろいろなアディポサイトカインが登場してきました。アディポサイトカインとは脂肪細胞から分泌されるサイトカインのことです。古くは脂肪細胞は、単なるエネルギーの貯蔵庫でたいした働きはしていないものと考えられていましたが、さまざまなアディポサイトカインを分泌し活発に活動していることが明らかにされてきました。比較的最近発見されたアディポサイトカインに「ビスファチン」というものがあります。

これは、「内臓脂肪由来アディポサイトカイン」の英訳(visceral fat derived adipocytokine)から命名されています。その名の通り、「内臓脂肪」より分泌されています。皮下脂肪からも多少分泌されているようですが、内臓脂肪からの分泌が圧倒的に多いとされています。

CTスキャンで、腹部の内臓脂肪の量と、血液中のビスファチンの濃度は、よく相関します。内臓脂肪が多いほど血液中のビスファチン濃度が高いのです。これは、マウスでも人間でも確かめられています。

また、ビスファチン自体は、インスリンのような血糖値を下げる作用もあるといわれています。インスリン以外で血糖値を下げる因子は今までほとんど知られていませんでした。 さて、このビスファチンは何か薬として使えるのでしょうか。また、血中濃度を測ることにより、診断や治療に役立つのでしょうか。

まだ、研究が始まったばかりで、確実なことはまだわかりません。しかし、遠くない将来臨床的に何らかの形で糖尿病の診断や治療経過の指標として臨床応用されるかもしれません。


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