糖尿病と脈波速度


「脈波」とは聞き慣れない言葉だと思います。心臓は収縮と拡張を繰り返して血液を全身に送り出しています。この収縮と拡張の繰り返しが、血管内の圧力が周期的に変動します。これを「脈波」といいます。この「脈波」は心臓から次第に遠くに伝えられます。この速度が「脈波速度」なのです。こんなものを調べて、一体何の役に立つのでしょうか。

実は、物理学的に脈波速度は管の内腔が狭いほど、硬いほど、管の壁が厚いほど速くなることがわかっています。血管が動脈硬化を起こすと、内腔が狭くなり、血管自体が硬くなり、血管壁も厚くなります。つまり、脈波速度を調べることにより動脈硬化の程度を知ることができるのです。

脈波速度を調べる試みは古くから行われてきました。最近ではかなり簡単に脈波速度を計測する機械も開発されています。

糖尿病では合併症の重症度と脈波速度に相関関係があることが多くの研究により明らかになっています。また、糖尿病のある人は、無い人に比べ脈波速度が速いこともわかっています。外国での研究では10年間の追跡調査で脈波速度の速い糖尿病では死亡率が高いとの報告もあります。

この速くなってしまった脈波速度を元に戻すことは可能なのでしょうか。まだ、糖尿病に関しては充分な検討がなされていないようです。高血圧の人では、高血圧の治療により脈波速度が改善することもあることが知られています。


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