糖尿病と腎移植


 糖尿病の慢性合併症の1つに糖尿病性腎症があります。 腎症に対して内科的治療が効かなくなった場合、 一般的には血液透析が行われます。

しかし、もう一つの選択として腎移植という方法もあります。 しかし、わが国においては糖尿病性腎症に対する腎移植はまれにしか行われません。 全腎移植症例のうち糖尿病性腎症に対してはわずか 0.5パーセント程度であるといわれています。

 糖尿病があると移植手術に対していろいろ不利な点があります。 糖尿病があると動脈硬化が進みやすく、 移植が必要なほど腎機能が落ちている人では動脈硬化の程度もかなり進んでいると考えられます。 したがって脳梗塞とか心筋梗塞を合併している可能性も高くなります。 また高度な動脈硬化があると移植そのものが難しくなります。

また、腎症で腎不全に到った患者さんは高齢者が多く、 これも移植を難しくしている一因と考えられます。

さらに、糖尿病があると感染に弱い、ということがあります。移植の場合、拒絶反応を防 ぐ目的で免疫抑制剤を使いますので、さらに感染の危険が高まります。 また、免疫抑制剤の中には血糖値を上げる薬剤もあります。

 外国で腎移植の症例が多いのは、インスリン依存型糖尿病で若い腎不全の患者さんが多 い、移植手術そのものが社会に受け入れられ法律や制度が完備しているなどの理由が考え られます。

日本でも最近移植に対する関心が急速に高まりつつあり、将来糖尿病性腎症に 対する腎移植が増加する可能性もあります。

 しかし、何よりも腎症を起こさないように良好な血糖コントロールを維持することがも っとも重要であることは言うまでもありません。


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