運動とエネルギー消費 その2


 運動強度を表す別の方法としてメッツ(METS)というものがあり、よく使われています。

これは、どういうものかと言うと活動時総代謝量を安静時代謝量で割ったものです。椅子 に座った状態の時は活動時総代謝量が安静時代謝量と同じになりますから1になります。 つまり、椅子に座って安静にしている時の何倍のカロリーが消費されるかがわかります。 直感的にわかりやすい指標だと思われます。ちなみに、ゴルフ(クラブを担いでカートを ひく)のMETSは5.1、サイクリング(時速16キロ)は7.0、縄跳び(1分間に60−8 0回)は9.0程度であるといわれています。

 また、運動者の主観的感覚から運動強度を表す方法もあります。これは、特別な計測器 も不要です。「最高にきつい」とはからだ全体が苦しく、もうだめだと感じる強さです。 「非常にきつい」は息が詰まる、続かない、「きつい」は、やめたい、のどが乾くと感じる 強度です。「ややきつい」は、どこまで続くか不安、汗びっしょりの状態。「やや楽」は充 実感、いつまでも続けられる、汗が出る程度の強度です。「楽である」は汗が出るか、出な いかの状態、隣の人と会話ができる程度の強度です。「非常に楽である」は、楽しいが物足 りないと感じる強度です。

 中高年の運動の場合、「ややきつい」「やや楽」程度の運動が適当であるといわれていま す。もちろん、運動が禁忌となるような病気や状態がない場合の話です。また、運動を長 期間続けることによってトレーニング効果が出て、同じ強さの運動を行っても楽に感じる ようになっていきます。

 運動強度を強めていくと呼吸数や脈拍が速くなっていき、それだけ酸素を消費する量が 増加します。どんどん運動強度を強めていくとある時点でそれ以上酸素の消費が増えない 状態になります。このときの1分あたりの酸素消費量を最大酸素摂取量といいます。

酸素摂取量と脈拍は非常に相関が強く脈拍を運動強度の指標とすることもよく行われます。最 大酸素摂取量の時の脈拍から安静時の脈拍を引いてこれに0.6-0.7程度をかけた脈拍が安静 時脈拍より増加する程度の運動が安全で効果があるといわれています。

たとえば最大酸素摂取量時の脈拍を170、安静時の脈拍を70とすると、 この差は100です。 これに0.6をかけると60、したがって70+60=130で脈拍が130程度 になる強さの運動が適当と考えられます。

しかし、実際に最大酸素摂取量時の脈拍を調べることは危険も多く 実際的ではありません。最大酸素摂取量時の脈拍は年齢によって決まってくることがいろ いろな調査でわかっています。10歳代では193、20歳代では186、30歳代では 179、40歳代では172、50歳代では165、60歳代では158、70歳代では 151程度であるといわれています。この値と安静時の脈拍の差に0.6をかけた値だけ脈拍 が増えるような運動がちょうどよいと考えられます。

また、トレーニングにより同じ脈拍になるのにより強い負荷が必要になっていきます。 したがって無理なく次第に強い運動を行うことができるようになります。

しかし、不整脈のある人、脈拍に影響を与える薬を使っている人、 糖尿病などで自律神経の障害のある人などはこの方法は全く当てにならない ので注意が必要です。


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