糖尿病と外科手術


 平均寿命が延長するに伴って糖尿病の患者さんが外科手術を受ける機会も増えてきてい ます。外国の文献によると糖尿病の人の約半数は一生の間に1回以上の外科手術を経験する そうです。

 では、糖尿病があると手術に際してどのような問題点があるのでしょうか。 糖尿病ではいろいろな代謝障害があるのでこれらを術前にできるだけ是正して より安全な状態で手術に望む必要があります。

血糖値が高いと尿量が多くなり脱水傾向が生じます。 こういった状態での手術ではいろいろな問題が起こります。

手術のストレスが加わると血糖値が高くなり思わぬ合併症が出てくることもあります。 糖尿病のない人でも大きな手術を受けるとそのストレスで一時的に糖尿病状態になる こともあるので、糖尿病の人はなおさら注意する必要があります。 術前に血糖コントロールが悪いと、これを是正してから手術ということになります から、手術までの期間が長くなってしまうことも考えられます。 しかし、緊急を要する手術ではそんな悠長なことは言ってられませんので、やむを得ず代謝 状態がよくない条件で手術を行わざるを得ません。

 また、麻酔などに使う薬品でも血糖値に影響を与えるものがあります。 もちろん悪影響のある薬は使いませんが、 いろいろな状態によっては使わざるを得ないこともあります。

 さらに、手術中には不測の事態に対処するため頻回に血糖値や、電解質、ケトン体などの チェックが必要となります。自律神経障害があると手術中に血圧の低下をきたしやすいとも いわれています。糖尿病のコントロールが悪いと動脈硬化が早く進みます。動脈硬化が強い と手術中の出血量が多くなることもあります。

 手術が終わってからも、血糖コントロールが悪いと傷が治りにくく化膿しやすくなります。

 糖尿病があると外科手術に際していろいろ不利なことが生じます。しかし、糖尿病があっ ても必要な手術は受けなくてはいけません。少しでも不利な条件を減らすためにも日頃の血 糖コントロールが重要です。


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