脂肪細胞について


糖尿病と肥満は密接な関係があります。 肥満とは、体に脂肪が過剰にある状態をいいます。

では、脂肪とはどんな状態で蓄えられているのでしょうか。 脂肪は脂肪組織といわれる所に存在します。 脂肪組織は主に脂肪細胞と呼ばれる細胞から成り立っています。

この脂肪細胞はどんなものかというと、 形の上からは単なる丸い細胞で顕微鏡で見ても特に興味を引く形態ではありません。 その細胞の中身のほとんどは脂肪です。 細胞には「核」(遺伝子などが入っている)と呼ばれる重要な 構造がありますがこの核も脂肪のためにはじっこに追いやられています。

肥満になるとこの1個1個の脂肪に蓄えられている脂肪の量が多くなります。 従って脂肪細胞の大きさは個体によってバラバラです。 豚の脂肪細胞などは0.2ミリくらいになるといわれています。 このくらいの大きさだと顕微鏡を使わなくても肉眼で見えてしまうような大きさです。 さらに肥満すると脂肪細胞にも脂肪を蓄える限度というものがありますから、 細胞の数そのものが増えることもあるといわれています。

さて、以前から脂肪細胞は脂肪を蓄えるエネルギーの貯蔵庫であると考えられていました。 飢餓になるとこの脂肪を燃料に使って使ってエネルギーを得るのです。 そして、それ以外の働きはほとんどないものと考えられていました。 他の細胞のように活発に活動することもないと考えられていました。

しかし、最近の研究では脂肪細胞は実にいろいろな物質を分泌しているということがわかってきました。その中の一つに「レプチン」といわれる物質があります。 ある種のマウスは遺伝的に過食で肥満する事がわかっています。 この遺伝的に異常のあるマウスと正常マウスの血管をつないで飼育すると 肥満マウスの肥満が是正されたという有名な実験があります。 これは、肥満マウスには過食を抑制する「飽食因子」が 欠如しておりこのために肥満になると考えられました。 正常マウスと結合することにより「飽食因子」が供給され 過食が止まり肥満が是正されたと考えられました。

また、別の種の遺伝的に肥満するマウスでは、 正常マウスと結合すると正常マウスの方が飢餓に陥り、 肥満マウスの方はいっこうに肥満が是正されないという実験もありました。 これは、この種の肥満マウスでは「飽食因子」は十分に出ている がそれが働かないため(受容体の欠如)と思われました。 従って正常マウスと結合すると正常マウスに多量の「飽食因子」が はいり込み食欲が抑制され飢餓に陥ると考えられました。

現在ではこれらの実験での「飽食因子」は「レプチン」であると考えられています。 摂食により脂肪細胞にエネルギーが貯蔵されると脂肪細胞より「レプチン」が分泌され、 これが脳に働いて食欲を低下させると考えられています。 また、人間においても肥満の程度と血液中のレプチンの濃度には相関があることが確かめられています。 さらに、人間の肥満者では血液中のレプチンが脳に行きにくいのではないか ということを示唆するデータもあるようです。

しかし、糖尿病とレプチンの関係についてはまだよくわかっていないのが現状のようです。 いずれにせよ脂肪をため込みすぎて脂肪細胞が張り裂けそうな状態はさけたいものです。


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