治療後に現れる神経障害


糖尿病で、血糖のコントロール不良が、長期間続くと合併症が起こってくることは、 すでにご存知のことと思います。

しかしこれとは、逆にコントロールが改善すると出現してくるやっかいな合併症もあります。 このひとつに、「治療後有痛性神経障害」といわれるものがあります。 読んで字のごとく治療をした後に出現する痛みを伴う神経障害です。

足がぴりぴりしたり、じんじんと疼くように痛んだりします。

時には、腰とか背中にまでこのような症状が出ることがあります。 そのため、睡眠不足になり「うつ症状」が、合併してくることもあります。 こうなると食欲がなくなり、体重も減少してきます。

この「治療後有痛性神経障害」は、長期間糖尿病を放置した後に、 血糖コントロールを行った時に出てくることが多いようです。

昔は、インスリン治療を開始した後で出てくることが多かったので「インスリン神経炎」などと呼ばれていました。 しかし、インスリン治療を開始したことが原因ではなく、長期間にわたる高血糖が急速に改善されたためであり、 食事療法を開始した後で出現することもあります。

なぜ血糖が改善した後で神経障害が出るのでしょうか。 残念ながら正確なことはわかっていません。 いずれにせよ、今まで症状がなかったのに治療をしたために症状が出てしまうことになるので、 患者さんにとっては迷惑な話でしょう。

この「治療後有痛性神経障害」に対する治療法もいくつかあります。 しかし、即効性にすぐによくなるという治療法はないようです。 一度傷害された神経はなかなか元に戻りません。 しかし、よい血糖コントロールを続けることによりいずれ回復してきます。 この期間は、個人差が大きく数ヶ月から数年と言われています。

「治療後有痛性神経障害」を防ぐには、糖尿病を指摘されたら、放置せずに直ちに 適切な血糖コントロールを開始することです。 検診などで糖尿病が発見され、すぐに食事療法などの適切な治療を開始した場合 この合併症が起こることはまずありません。


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